東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1004号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙目録(二)記載のA棟中別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、イの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分を木造二階建居宅、事務所、倉庫床面積一階52.88平方米二階52.88平方米に改築することを許可する。
2 別紙目録(一)記載の土地についての申立人・相手方間の賃貸借契約の賃料を本裁判確定の月の翌月分から一ケ月七〇〇〇円に改める。
3 申立人は、相手方に対し、金二七万円の支払をせよ。
〔理由〕(申立の要旨)
1 申立人は、昭和二二年一月一日相手方の先代大塚五郎衛門から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的、期間昭和四一年一二月三一日までの約で賃借し、同地上に木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建店舗、居宅床面積71.90平方米附属木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建物置床面積12.39平方米同木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建物置床面積13.20平方米を建築して所有した。大塚五郎衛門は昭和二八年一月一八日死亡し、相手方は相続により賃貸人の地位を承継した。
2 申立人は、昭和三三年右建物の主屋に増築を施してこれを別紙目録(二)記載A棟の現況の如くし、附属建物を撤去して、そのあとに同目録(二)記載のB棟を建築した。
3 本件借地契約は期間満了に伴い昭和四二年一月一日法定更新され、残存期間は昭和六一年一二月三一日までである。賃料は、昭和三七年一月分から3.3平方米当り月額五〇円に改められ、現在に及んでいる。なお、相手方から賃料を昭和四〇年一月分から3.3平方米当り月額一〇〇円に増額する旨の請求があつたが、申立人はこれを不当とし、同月分から3.3平方米当り月額六〇円の割合で供託を続けている。
4 申立人は、別紙目録(二)記載のA棟の一部を主文第一項記載の如く改築したいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立の要旨として掲げた前記1、2の事実のほか賃料及び供託に関する前記3の事実が認められる。
相手方は、申立の要旨2の増改築は相手方に無断で為されたものであり、昭和四〇年一月一日以降相手方の増額請求にかかる3.3平方米当り月額一〇〇円の賃料を支払わず、3.3平方米当り月額六〇円で供託しているので、昭和四一年五月一四日付内容証明郵便で、申立人に対し、期間満了の昭和四一年一二月三一日かぎり賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたので、申立人は、昭和四二年一月一日以降本件土地につき借地権を有しないと主張する。
申立人が相手方に差し入れた昭和三七年一二月三一日付土地賃貸借契約証書を見ると、「賃借地内に築造する建物の種類及構造は借地法の規定堅固たる建物以外の建物とす」と印刷されている下に「既に建ててある物はこの限りでない」と書き加えられているので、これによれば、相手方のいう増改築は、相手方において承諾したものというべきであるので、無断増改築を理由とする解除の主張は失当であり、一歩を譲り、仮りに、右解除が有効であるとしても、相手方は、期間満了後今日まで四年半以上の間土地明渡の訴を提起する等申立人の本件土地使用を禁止するための積極的行為をとらず、単に賃料の受領を拒絶しているに過ぎないので、借地法六条により、解除後更新されたものと考えられる余地が十分あるので、本件において、申立人の本件土地借地権を否定するのは相当でない。また、賃料増額請求に基づく解除の主張についてであるが、当時は現行借地法一二条の施行前であるとはいえ、増額請求にかかる賃料が果して相当であるか否かは賃借人としては通常判断に迷うものであるので、専問家の鑑定あるいは裁判所の判決により相当額が客観的に明らかになれば格別、しからざる限り、増額請求にかかる賃料を賃借人が支払わなかつたからといつて、このことを理由とする賃貸借契約の解除は失当である。
2 右のように解除の主張は採用しがたく、相手方において更新拒絶を正当とする理由もないので、本件借地契約は昭和四二年一月一日法定更新され、残存期間は昭和六一年一二月三一日までということになる。
3 本件の資料によれば、本件改築は土地の通常の利用上相当であると認められ、増改築の制限に関する特約の存否は必ずしも明らかとは認め難いので、本件申立は、これを許可するのが相当である。
4 附随処分
本件改築は、申立人の営業及び住の快適性にプラスをもたらし、申立人として、本件土地を従前より有効に使用することが可能となるので、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に財産上の給付を命ずるのが相当である。その額につき按ずるに、本件改築は、借地上の建物の全面改築でなく、一部の改築に止まり、従つて、今回改築しない部分もいずれは増改築を免れず、その際賃貸人に承諾料を支払うか本件のように財産上の給付を命ぜられることになるので、給付額は全面改築より低くて然るべく、全面改築の給付額を基準とし、これを改築部分と非改築部分との床面積で按分するのが相当である。よつて、給付額は、従来の裁判例に徴し、鑑定委員会の評価による本件土地更地価格二二二一万四、六四〇円(一平方米八万四、〇〇〇円)の1.2%に当る二七万円(万円未満四捨五入)と定める。
本件改築に伴い賃料を改定するのが相当であり、鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月分からの賃料を一ケ月七、〇〇〇円(3.3平方米当り八七円五〇銭)に改める。(小山俊彦)
目録
(一) 東京都大田区大森中二丁目三七八〇番
宅地 290.90平方米(八八坪)のうち264.46平方米(八〇坪)
(二) 右地上所在
1 A棟 家屋番号三七八〇番四
(登記簿上)
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建店舗居宅
床面積 71.90平方米
(現況)
木造亜鉛メッキ鋼板セメント瓦交葺二階建店舗居宅
床面積 一階 96.87平方米
(二九坪三合)
二階 41.52平方米
(一二坪五合六勺)
地下 22.31平方米
(六坪七合五勺)
2 B棟
軽量鉄骨スレート葺平家建物置
床面積 49.58平万米(一五坪)
図面(略)